人形がたり〜たまさか人形堂より〜

形を扱った物語・小説は数多い。中でも目立つものが、「人と人形との主従関係入れ替わる小説」だ。ホフマン「砂男」、江戸川乱歩「ひとでなしの恋」中井英夫『銃器店へ』や半村良「石の血脈」など、幻想文学を代表する数々の作家の作品に、そのモチーフは見受けられる。

日の幻想文学界をリードする作家、津原泰水の連作小説集『たまさか人形堂物語(文藝春秋社刊,連載時タイトル「人形がたり」』の出版にあわせ、本企画は生まれた。「人と人形の入れ替わり」を大きなテーマにする。

まさか人形堂物語」は、人形店を営む女性主人公を語り手にした、現代日本を舞台にした連作小説集だ。さまざまな種類の人形と、それにかかわる人々が登場する。創作ビスクドールの顔を基準に自分の理想の顔を見る女性や、ラブドールを恋人のように尊重する男性が登場する。これらに通底するテーマは、人と人形との主従関係の混乱だ。

画展「人形がたり 〜たまさか人形堂物語〜」も、これを主要なテーマにする。

なぜ人形を作るのか? なぜ人形を手元に置くのか? 手がかりは、「人形は、人に似ているから」、あるいは「人は、人形に似ているから」だ。

は、人の心の動きをもっとも直截に表現する。

は、人の見目姿をもっとも直截に表現する。

れた物語文学心は躍る小説世界を「これこそ自分の生きる世界だ」とさえ思う。読み終えるのが哀しくなりもする。では、優れた人形は? 人に似せて作られ、人よりも美しく、かわいらしく、独創的につくられた人形を前に、人はどんな反応を返すだろう? それが本企画のテーマ「人形がたり」。

桁裕子の赤ん坊を象った人形「Sugar Baby」――赤ん坊の寝姿を前に、小声になる鑑賞者は多い。人形を前に、人はどんな言葉を語ることができるだろう? 人形は人に、どんな言葉を語らせることができるだろう?